脳とビデオゲーム

迅速さを必要とするビデオゲームは脳にどんな影響を与えるか? 認知科学者ダフネ・バヴェリアの研究室に行ってみましょう。ビデオゲーム、それもアクション系の射撃ゲームでさえ、我々の学習能力、集中力、それにマルチタスク能力を高めることができるという驚くべき発見を披露してくれます。



訳文

私は脳科学者です そして脳科学者として 実際にどのように脳が学習するのか 脳がより賢く より良く より早く働く可能性に 特に興味があります

この観点から ゲームについてお話しします ビデオゲームというと ほとんどの人が子供達を思い浮かべます 実際に90%の子供がビデオゲームで遊びます でも 正直言って 子供達が寝た後 プレイステーションの前に座っているのは誰でしょう? 皆様のほとんどです プレイヤーの平均年齢は 8歳ではなく 33歳なのです さらにプレイヤー層から考えれば 未来のプレイヤーは 高齢者なのです (笑)

ビデオゲームは社会にすっかり普及しました ゲームは確かに社会に定着し 我々の日常に強烈なインパクトを与えています アクティビジョン社による この統計を見てください 「コール オブ デューティー:ブラックオプス」 の発売後1ヵ月間の 世界中あわせての合計プレイ時間は 6万8千年に及びます これが 線形代数の勉強に 使った時間なら 文句を言う人もいないでしょう

そこで我々はこのパワーの 活用法を研究しています 少し話を戻しましょう 家に帰ったら お子さんが ゲームで遊んでいた という経験が皆さんにもおありでしょう 悪者のゾンビを撃って やっつけるゲームです わかりますね? 皆さんはこう考えるでしょう 「ああ何だってゾンビをやっつけるより もう少しましなことができないの?」 さて一方で もし お嬢さんが数独をしていたり 息子さんがシェークスピアを読んでいたら どんなふうに反応しますか? ほとんどの方は素晴らしいと思うでしょう なにも毎日ビデオゲームに明け暮れるのが 健康に良いとは言っていません 何事もやりすぎは禁物です しかし適度であれば 最初にお見せしたような アクション射撃ゲームも いろいろな場面で ちょっとした役に立つのです

ビデオゲームの影響の良し悪しが 毎週のように 主要メディアに とりあげられています 休みなしにです このような とりとめのない 討論はさておき 実際に研究室をのぞいてみましょう 我々が研究室でしていることは ビデオゲームがどう脳に影響するか 定量的に計測することです いくつかの例をお見せします

まず最初に ゲームの画面を長時間見ていると 視力が落ちる と聞いたことがあると思います 視覚の問題です 皆さんの中にも視覚の専門家がいるでしょう 真偽を確かめるのは簡単です 視力を測ればいいだけです さて結果はどうでしょう? アクションゲームをプレイしない人 つまり画面をあまり見ない人は 視力が通常でした 当然です さてビデオゲームに漬かっている人 1週間に何時間も プレイしている人はどうでしょう 1週間に何時間も プレイしている人はどうでしょう 彼らの視力はかなり悪いはずです ところが 彼らの視力は とても良かったのです ゲームをしない人より良かったんです 優れていた点は2点です ひとつは雑多なものの中でも 細部を見分ける力 つまり 細かい文字を読むとき 虫眼鏡を使わなくても 裸眼で読めるということです 虫眼鏡を使わなくても 裸眼で読めるということです もうひとつの優れた点は 灰色の濃淡を見分けられることです 霧の中で車を運転しているとしましょう 前の車が見分けられるかどうかで 事故にあう確率が変わります この実験を基に 私たちはゲームを開発しています 視覚に問題のある人が 頭脳を再訓練して 視覚を改善するためのゲームです アクションゲームに関して言えば 画面を長時間見ても 視力は低下しないのです

もう一つ 俗説を紹介します 「ビデオゲームは集中力を弱め 注意力を散漫にする」 さあ研究室では注意力も測れます テストの方法をご紹介するために 実際にテストをやって見ましょう 皆さん一緒に参加してください 色のついた単語が現れるので 文字の色を言ってください 用意はいいですか? 最初の例です 「椅子」 オレンジですね 「テーブル」緑 「黒板」 赤 「馬」 黄色 「黄色」 赤 「青」 黄色 何が起こっているか 分かりましたね(笑) なぜこのテストは難しいのでしょう? 言葉とその色自体が 矛盾しているからです 集中力の良し悪しは 矛盾を解消する早さで決まります だから若い人は年配の人より 良い成績が出せます このようなテストをしたとき 頻繁にゲームをしている人は このようなテストをしたとき 頻繁にゲームをしている人は 良い成績を出せるのです つまりアクションゲームをプレイしても 注意力に問題は生じないのです

むしろ ゲームプレーヤーは 集中力の面で言えば優れています 注意力の一要素である 周囲の状況を把握する能力に優れているのです この力は日常よく使われるものです 例えば車を運転するときです 周囲の車や 歩行者や犬の位置を把握していることで 安全運転が出来るわけです

研究室に来た人たちには コンピューターの前に座ってもらいます 研究室に来た 人たちには コンピューターの前に座ってもらいます 皆さんにもやっていただきましょう 黄色い幸福そうな顔と 青い悲しそうな顔をお見せします 冬のジュネーブの子供たちの顔です ほとんどの子供たちは幸せそうです 休み時間ですからね 悲しそうな子もいます コートを忘れたからです 子供たちが動き始めますので 誰が始めにコートを着ていたか 着ていなかったか 見失わないで下さい ちょっとやってみましょう 悲しそうな子は一人だけなら 実際に眼で追えるので これは簡単です 映像が止まって はてなマークが付きました この子はコートを着ていましたか? 最初は黄色でしたか 青でしたか? 黄色という声が聞こえました 皆さん大丈夫です(笑) では皆さんに挑戦してもらいますが 今度はもう少し難しくします 青い子が3人になります 目を動かさないで 注意を払う範囲を 広げてください 視線を動かしたらダメですよ 黄色ですか 青ですか? 聴衆:黄色 ダフネ: いいでしょう 普通の若者は 3~4つのものに注意を向けられます 私たちが今やったようにね アクション・ゲームプレーヤーは 注意を 6つ7つに向けられます アクション・ゲームプレーヤーは 注意を 6つ7つに向けられます では アクション・ゲームをする方 やってみましょう ちょっと難しいでしょう?(笑) 黄色ですか 青ですか? 青 真剣になってる人がいますね(笑)

さて 私たちはゲームが プレイヤーの行動に どう影響するかだけではなく 脳のイメージングで 脳自体への影響も研究しました その結果 脳の様々な変化を発見しました 最も変化のあったのが 注意力を司るネットワークでした 一つ目は頭頂葉皮質 注意力の向きを制御する部分です 二つ目はは前頭葉 注意力を維持する部分です 三つ目は前帯状皮質 注意力を制御し 矛盾を解決するところです 脳画像を研究した結果 アクションゲームで遊ぶ人は この3つ全てのネットワークの 効率の良い事がわかりました

ここからテクノロジーと頭脳に 関する文献に行き着き 直感に反する事実を発見しました マルチタスクとよく言いますが 運転中に携帯を使っていたら それは大きな間違いです なぜか? それは注意力が電話に向くからです 目の前の車がブレーキをかけても すばやく反応できなくなり 事故に遭いやすくなるわけです この能力も研究室で測ってみました といっても 実際に事故に 遭ってもらうわけにはいきません といっても 実際に事故に 遭ってもらうわけにはいきません そこで精密なコンピューターを使って 一つの作業から別の作業に どれだけ早く移れるかテストしました 結果 アクションゲームでよく遊ぶ人は 成績が非常に良かったのです 彼らはほんの少しの労力で すばやく作業を変更していました

この結果を念頭におき テクノロジーを使いこなす 他のグループで考えて見ましょう 社会でも非常に尊敬されている マルチメディア・タスキングを している人たちです マルチメディア・タスキングとは何か? 私たちや子供たちのほとんどは ウェブで検索をしながら 音楽を聴き 同時にフェイスブックで友達とチャットをしています これがマルチメディア・タスキングです スタンフォード大の同僚の研究と 私たちが行った追実験の結果 マルチメディア・タスカーを 自認する人でも マルチタスクが 全然できていないと わかりました テストの成績が悪かったのです

どうです? これらの研究の 重要なポイントは2つです 一つ 「全てのメディアを 同一視はできない」 マルチメディア・タスキングの影響と アクションゲームの影響は別物です 認知 知覚 注意力等の様々な側面で 全く違う影響を及ぼすのです 今私がここで話している アクションゲームでも違います 異なるビデオゲームは 脳に異なる影響を与えます だから一つ一つの ゲームの影響を 実際に計測する必要があるのです

もう一つの教訓は 「俗説はあてにならない」です 先ほどご説明したように アクション・ゲーマーの様に 画面を見続けても 視力は良いとか いろいろです 面白いのは マルチメディア・タスキングを よく実践しているという学生たちが 実験で満点近い成績だったと 思い込んでいることです 結果のデータを見せると 「そんなはずはない」と言います 直感的に すごくうまくやったと 思っていたのです 研究室で実際に計測をする 必要があるのは この思い込みも一つの要因です

ビデオゲームが脳に及ぼす影響は ワインが健康に及ぼす影響と よく似ています ワインの飲みすぎはよくありません ゲームのやりすぎもいけません しかし成人が適量を飲むならば ワインは健康にいいのです 赤ワインには寿命を延ばすとされる 物質が含まれることが わかっています それと同じように アクションビデオゲームも 脳の柔軟性 学習能力 注意力や 視力を向上させる 要素を持っています その要素が何なのか分かれば 教育やリハビリのために ゲームを活用できます

でも 私たちの研究は 教育やリハビリに対する影響で ビデオゲームで長時間遊ぶ方々の 能力については あまり興味はないのです 誰を選んでも アクションゲームをプレイさせれば 視力を向上させられるということを 証明するのに関心があるのです 実際にゲームを プレイしたいかは 無関係です リハビリや教育は そういうものです 「やった 今日は数学2時間もやれる!」 なんて 学校にいく子どもは 普通 いません

これが 研究の核心となるポイントで 研究を深める必要がありました そこで「訓練研究」を行いました 心的回転というテストを例に お見せしましょう 皆さんも実際にやってみてください この形をよく見てください これが問題の形です 次に4つの違った形をお見せします 4つのうちのひとつは 問題の形を回転させたものです どれかわかりますか? 正解は4つ目です もう一問 頭を働かせてください これが元の形 答えは3番目 難しいでしょう? どうですか 頭を使ってる感じがしましたか? 頭を使わないアクションゲームとは 違いましたよね

さて 訓練研究では 先ほどのような テストの後に 10時間のアクションゲームを 強制します 連続してプレイするのでは ありません 40分ずつに分けて 2週間の間に 少しずつ こなしてもらいます 2週間後に研究室で 同様のテストをしてもらいます これはトロントにいる 私の同僚の研究です 最初のテストの結果は 年齢に見合ったものでした 2週間のゲームプレイの後は 成績が上がりました しかも5ヵ月後に測っても 成績は良いままでした これはとても重要です なぜなら ゲームを 教育やリハビリに使うためには 効果が持続する必要があるからです

このような結果を見て 社会に役立つゲームを 早く作れないものかと 思う人もいるかもしれません お婆さんが楽しみながら 注意力を高めたり 弱視の子供のリハビリに 役立ったりするゲームです

しかしまだ課題があります 私のような脳科学者には ゲームの役立つ要素とは何かが わかり始めました これが この課題を解くための 「ブロッコリー」の要素です 一方 娯楽ソフトウェア業界は すぐに手に入れたくなるような 魅力的な商品を発売するのに 長けています これが課題の「チョコ」の要素です この2つの全く相容れないものを 一緒に出来るか この問題は食べ物と似ています チョコに包まれたブロッコリーを 食べたい人なんているでしょうか?(笑) いませんね(笑) ゲームにも同じことが言えます 教育に役立つゲームは いまひとつ おもしろくないので いま求められているのは 食べずにはいられない 新しいタイプのチョコで ブロッコリーの栄養分だけが 密かに添加され 脳に良い影響を与える そんなチョコレートを 開発しています 脳科学者やゲーム業界の人 ソフトの出版社と協力して 研究を進める必要があります 珍しい組み合わせかも 知れませんが 可能性があり 正しいやり方で進んでいると 分かって頂けたらと思います 皆様のご拝聴に感謝いたします (拍手) (拍手)

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