通勤電車で初めて漫画雑誌を読んだ男

あれは1985年の4月のことだったと思う。
当時私は、西船橋駅から東西線に乗り、せっせと都心へと通っていた。

毎日ほぼ同じ時間に電車に乗ると、ホームで見かける顔ぶれも大体覚えてくる。いかにもスーツに慣れていないと言った格好の、リーゼント頭の兄ちゃんを何人も見かけていたので、4月と言うのも間違いないだろう。

その頃週刊少年ジャンプではドラゴンボールが連載されており、ジャンプの発行部数もうなぎ登りに伸びている時代だった。
漫画ファンだった私も、当然の様に毎号ジャンプを読んでいたが、流石に朝から漫画を読む勇気?は無く、毎週発売されるジャンプを駅の売店で見かけ、早く読みたいと言う衝動に駆られながらも、ぐっとこらえて電車に乗り込む日々を繰り返していた。

今でこそ電車内で漫画雑誌を読む人も珍しくはなくなったが、当時そんな事をしている人を見かける事は全く無かった。

ところがそんなある日、電車を待つホームで一人のサラリーマンがジャンプを読みながら立っていた。
これには衝撃が走った。『えっつ!良いのか?モラルは?プライドは?』と声にこそ出さなかったが、そんな思いが頭の中を駆け巡った。

周りを見てみると同じ思いをした者も多かったらしく、驚いた顔をした人を何人か見かけた。
しかし衝撃はそれだけでは収まらなかった。次の日にはリーゼント頭の新入社員や若手サラリーマンがジャンプを手に駅のホームに立っていた。
それから伝染病の様にあちらこちらで漫画を読む社会人を見かける様になった気がする。

新聞や雑誌のコラムで電車内で漫画を読む大人を嘆く記事を見かける様になったのもその頃だ。

もしかしたらあのサラリーマンが、日本で初めて通勤電車で漫画を読んだ男だったのかも知れない。

今でも時々思い出す。
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